戸山流は、旧日本帝国陸軍戸山学校において刀戦の実戦体験と各流古武道刀法を取り入れ編纂された軍刀操法を源としており、第二次世界大戦後に森永清先生、山口勇喜先生、中村泰三郎先生らがそれぞれの居合理念を取り入れて戸山流居合道と呼称し、日本全国に普及・伝承させていった抜刀術です。陸軍で軍刀操法を指導していた徳冨太三郎、中村泰三郎の両氏が「戸山流振興会」を設立し、両氏の指導の下に活動を開始しましたが、他流派の抜刀術団体との交流の目的で「全日本抜刀道連盟」を設立するとともに、「戸山流振興会」を「全日本戸山流居合道連盟」と名称変更する等、二つの連盟を両輪とした一の組織として活動をした歴史があります。その後変遷があり、平成13年に「全日本抜刀道連盟」と「全日本戸山流居合道連盟」を分離させ、「全日本抜刀道連盟」は戸山流以外の居合道各流派をも対象とした組織となります。これらの活動はその創設経緯からも戸山流居合道を流派として修練・継承しようとする各地の道場の集合体で形成されており、所謂、宗家、若くは家元といった類が存在する組織ではなく、連盟に加入している会員によって民主的合議による運営がなされる組織であり、会員は連盟への貢献義務を有し、明確な規約の下に権利の行使が約束された組織が当然の事として期待されました。
現在、海外の武道家の間に於いても戸山流居合抜刀道は注目されており、その修練・伝承に携わることを望む人々が増加している事がよく知られています。これらを踏まえて、(一社)戸山流居合抜刀道を日本国内はもとより海外にも広く伝承して行くため、連盟会員個人を尊重し、義務と権利を明確にするなど、国際基準に沿って連盟の組織運営を公正かつ透明化して、会員各位に対して誠実に対応して行くことが望まれております。
(一社)戸山流居合抜刀道の活動は、組織として幾多の変遷を経ましたが、その戸山流居合抜刀道としての形や試斬については、故・植木政治、酒井田善衞門らが連盟指導部長を継承し、国内外に拡く伝承かつ普及させて参りましたが、会員の権利、義務を明確にし、会員相互の協力によって高みを目指す新たな組織として、永きに亘り戸山流居合抜刀道の修練を続けて参りました有志の呼びかけにより、戸山流居合抜刀道を研鑽・修練するとともに、国内外に広く伝承・普及させることを目的とする「(一社)戸山流居合抜刀道連盟」を設立するに至りました。